地域の気になる専門医紹介 漢方診療を積極的に取り入れる医院を訪ねて

toku_050701_kubota_doc久保田内科胃腸科医院 久保田 達也 副院長
函館市松陰町28番18号 TEL 0138-51-5326

toku_050701_kubota_01久保田内科胃腸科医院は、昭和41年に松陰町で開業しました。東洋医学を取り入れた診療内容は開業当時から変わらず、現在は日本東洋医学会専門医指導施設としての認定も受け、伝統的な漢方医学的な診断や生活指導などを行っています。
漢方医学とはどういうものなのか、また治療はどのように行なわれるのか。久保田内科胃腸科医院での取り組みについて、当院の副院長である久保田達也先生にお話をうかがいました。


「メディカルページ函館平成17年度版」(平成17年7月1日発行)の冊子に掲載された記事です。※院名や役職、また内容についても取材時のまま表記しています。

漢方治療は、全身療法である

◆東洋医学を取り入れたきっかけを教えてください。

もともとは父である院長が開業した当時、漢方を取り入れた食事指導や針灸治療などを行っていたことがはじまりです。たとえば胃潰瘍にしても、今でこそいい薬がたくさんありますが、昭和40年代は、薬の種類が少なく、胃潰瘍も手術したり入院していた時代です。そういう中、漢方を使って治療したり食事の指導をすると病状がよくなるということを経験したそうなんですね。医学はたしかに日進月歩していますが、西洋医学的にみると、手立てがない場合ということもあるわけです。
もちろん西洋医学を否定しているのではなく、両方をうまく取り入れた治療を取り入れていきたいと考えているんです。

◆西洋医学と東洋医学を併用することに問題はないのですか?

日本は、東洋医学に関してアジアの地域の中でも、少し特殊な事情があるんですね。2000年以上もの歴史のある東洋医学は、中国や韓国、台湾などの地域では、専門の大学で学ばなければ診療できないことになっています。たとえば中国の医師は西医、中医という専門分野に明確に分かれており、たとえば、西洋医学の医師が漢方薬を使うことは法律的には禁じられているんです。もちろん、その反対もしかりです。一方日本の場合は、医師であればどちらの学問も診療に活かしていいことになっています。両方のよいところを合わせた治療が受けられるわけです。日本の患者さんは幸せなんですよ。

◆西洋医学と東洋医学の大きな違いは何ですか?

西洋医学の場合、体全体を診るというところが足りないですね。たとえば胃潰瘍の場合、西洋医学では胃の中を調べて、ピロリ菌がいます、胃酸も多いです…と。また、ストレスが原因だと訴える患者さんの場合、安定剤を処方するかもしれません。一方、東洋医学では、胃の熱をとったり、胃の働きをよくだけではなく、体全体に作用する処方を使います。そうすると食欲が出てきたり、体調がよくなったり、体のほかのところがよくなる治療が可能になるわけです。
西洋医学には、EBM(Evidence-based Medicine:根拠に基づく医学)という考え方があります。これは、さまざまな治験の結果、出された数値に基づいて、その中で有効な方法をスタンダートな治療法として推奨するという考え方です。たとえば、男性の45歳以上であれば、コレステロール値は〇〇だから〇〇ぐらいまで下げなくてはならない、そのためにはこういう治療法を施すという考え方。血圧の治療、糖尿病の治療なども同じです。ただ、やはり標準治療であり、確率論ですから、6、7割の人にしか当てはまらないということでもあるわけです。もちろん、世界的にみて、何万例もの膨大な治験結果による数値であり、その様な診断、治療も大切です。ただ、数値的には異常がみられないけれども、病状を訴えている場合など、そこからはずれた患者さんの治療はどうするかを、医師は勉強しなくてはならないと思うんです。患者さんに対して「数値的には問題ありませんから、もうこれ以上よくしてあげられません」とは言えないですよ。なるべく多くの可能性を持って診療にあたりたい。東洋医学の場合、いろいろな症状を広くうけとめる余地がたくさんあるんです。

各人に合わせて薬方が決められる

toku_050701_kubota_02◆漢方診療はどのように診るのですか?

当院の場合、まずは3ページほどある問診票に沿って、体全体についての状態をうかがいます。その後、舌、脈、お腹を診ます。足にも触れてむくみや冷えなども調べます。血圧などの一般的診療と併行して、広く全身の状態から手がかりを探していくんです。胃腸の調子が悪かったり慢性病がある方などは、舌に苔が生えていることが多いので、舌を診ることで病気がどれぐらい続いているかわかります。脈を診ることで、脈の強さや速さ、力のありなしがわかります。お腹の状態も非常に大切です。お腹の張りぐあいで胃腸の調子などもわかりますし、体力的なこともわかります。お腹がしっかりしている人は食欲もあり、暑がりで健康な方が多いです。特に女性であれば、手足の状態から、血のめぐりがいいかどうかなどがわかります。血のめぐりが悪い人は、病気が治りにくい人が多いですよ。胃潰瘍を患っている患者さんの中にそういう方がいた場合、潰瘍のお薬以外に、体全体をあたためる漢方薬を併用することをおすすめするんです。そうすることで治りがよくなります。

◆漢方診療に向く患者さん、向かない患者さんということがありますか?

体力がなかったり、痩せていて食欲がない方、高齢者の方などは、漢方的治療が有効だと思います。たとえば、胃痛で病院にかかり慢性胃炎と診断され、治療はしているけど、あいかわず食も細くすぐに疲れるなどの症状の方は、西洋医学的には、胃の動きを良くする薬を処方するぐらいで、あまり治療法がないんですね。ところがそういう方に朝鮮人参が含まれた漢方薬を使うと、めきめきと調子がよくなってきて、食欲も戻り太ってきます。
また、胃ガンの手術後の患者さんの場合は、一般的に10kgぐらい痩せます。そうすると体も冷え切って体力もなくなってきます。そういう場合にも、体をあたためて体力をつけるような漢方薬を飲むことで速やかに回復していくことが多いです。不定愁訴(これといった原因がないのに感じられる体の不調のこと)を訴える患者さんや、自然治癒力が低下している状態の患者さんには特に向いていると思います。

漢方医学は古来から伝わる伝統医学

◆漢方薬を服用することで副作用というものはありますか?

ないとはいえませんね。やはり元々は体にないものですし、薬理活性がありますから。食べ物にしても、他の人が食べてなんともなくても、不調が起きる場合がありますよね。アレルギーなど、個人的な特異体質というものもありますから。ですから、やはり知識を持っている方に相談された上で服用されるのがいいと思います。痩せる漢方薬というのが女性の間で流行っていますが、あれは、生薬が入っていたとしても漢方薬ではなく民間薬の場合もあります。ある程度、丈夫で健康な方を前提に作られています。ですから冷え性だったり、体の弱い方が飲むと、水みたいな下痢が出たり、体がだるくなったり冷えたりなど、具合が悪くなったりするんです。本来の漢方薬というのは、〇〇種類の生薬〇〇gを合わせる、2000年もの間、受け継がれてきた伝統ある処方です。風邪の漢方薬である葛根湯などは、漢の時代からある薬ですからね。

◆漢方薬の、より効果的な飲み方というのはありますか?

昔から食前、空腹時に飲むことになっています。もともとは煎じ薬なので、煎じてあたたかいうちに飲んでいたんです。例外的に吐き気があったり出血があったりする場合は、冷たくして飲む場合もあります。今はエキス製剤といって粉状になっているものがほとんどですが、やはり熱湯に溶かすかお湯で飲むのが効果的だと思います。
また、ひとつの漢方薬には複数の生薬が含まれていますが、二種類服用する時などは、効果的な組み合わせで患者さんに合わせて処方することが大切になります。漢方医学は古来から伝わる伝統医学ですから、もっと多くのお医者さんに勉強してもらいたいですね。

◆ありがとうございました。


久保田内科胃腸科医院
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